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熱可塑性CFRPの成形技術に関する研究

担当教員:岩堀

飛行機をより軽く、効率よく作るために

 近年、航空機構造には、軽量かつ高強度な炭素繊維強化プラスチックが広く使用されています。中でも、熱可塑性樹脂を母材とする炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)は、短時間での成形や再加工が可能であることから、次世代航空機構造への適用が期待されています。

 CFRTPを効率的に成形する技術の一つに、自動繊維積層(AFP)があります。AFPでは、CFRTPプリプレグテープを加熱しながらローラーで加圧し、所定の位置へ連続的に積層します。さらに、積層と同時に材料を接合する成形法を利用することで、成形後の加熱・加圧工程を削減し、高効率な製造が可能になると期待されています。

 一方、この成形では、短時間の加熱・加圧・冷却が繰り返されるため、成形後の変形や材料内部の状態変化、積層不良など、さまざまな課題が生じます。本研究室では、これらの課題に対して、材料の変形、熱履歴、結晶状態、積層不良の修正など、複数の観点から研究を行っています。


成型すると材料はどのように変形するのか(AFP成型における熱残留応力)

 AFPでは、CFRTPプリプレグを加熱した状態でローラーにより加圧し、その後冷却することで積層・成形を行います。この過程では、材料の熱膨張・熱収縮などが生じるため、成形後に寸法変化や反りなどの熱残留変形が発生する場合があります。

航空機部材には高い寸法精度が求められるため、このような成形後の変形を把握し、その発生原因を明らかにすることが重要です。

 そこで、成形中に材料に加わる加熱・圧縮・冷却の工程を実験室内で再現し、温度・加圧荷重・加圧時間などの条件が試験片の変形に与える影響を調べています。

実験では、成形前後の試験片の長さ、幅、厚さを測定し、成形条件との関係を評価します。これまでの研究では、温度が高くなるにつれて試験片の幅が増加し、厚さが減少する傾向が確認されています。また、一部の高温条件では、成形後に反り変形が生じることも確認されています。

 これらの結果から、成形条件と材料の変形挙動との関係を明らかにし、熱残留変形の発生メカニズムの解明や、変形を抑制する成形条件の検討につなげることを目指しています。


図1 積層概念図[1]
図1 積層概念図[1]

材料の中では何が起きているのか(AFP成形時の熱履歴・結晶状態・収縮挙動)

 CFRTPに用いられる熱可塑性樹脂の中には、分子が規則的に配列した結晶領域が存在します。その状態は、材料が成形中に受ける温度履歴によって変化し、材料の特性や成形後の変形にも影響を与えると考えられています。

 そこで、AFP積層板内部に熱電対を設置し、成形中に各層がどのような温度履歴を受けているのかを測定しています。また、成形後の材料についてX線や顕微鏡を用いながら、温度履歴と樹脂の結晶状態との関係を調べています。

さらに、熱可塑性樹脂が冷却される際には、温度低下に伴う熱収縮だけでなく、結晶化の進行による結晶化収縮も生じる可能性があります。そこで、樹脂試験片にひずみゲージと熱電対を取り付け、加熱・保持・冷却過程における温度とひずみを測定するとともに、熱処理前後の結晶をX線で評価しています。

 これらの実験を通して、熱履歴、結晶状態、収縮挙動の関係を明らかにし、AFP積層板に生じる残留変形を材料内部の状態変化から理解することを目指しています。


図2 試験片内部の結晶[2]
図2 試験片内部の結晶[2]

失敗した積層を修正するには?(熱可塑性CFRPの熱圧着・剥離特性)

 AFPは高い生産性を持つ一方、積層時にプリプレグテープの位置ずれやしわなどの積層不良が発生する場合があります。

 不良層のみを剥離して再積層できれば、部材全体を廃棄する必要はありませんが、剥離時に母材樹脂の損傷や炭素繊維の破断が生じると、下層の強度低下につながる可能性があります。そこで、異なる温度・圧力・保持時間でCFRTPを熱圧着し、圧着条件が層間の接合状態や剥離特性に与える影響を調べています。

 圧着後の試験片については、剥離強度を測定します。また、剥離後の表面を観察し、繊維破断、樹脂内部での破壊、界面での剥離など、どのような破壊形態が生じたのかを評価します。

 これらの結果から、熱圧着条件と剥離強度・破壊形態との関係を明らかにし、下層の材料をできるだけ損傷させずに不良層を除去できる条件を検討することを目指しています。将来的には、AFP成形中に発生した積層不良を修正するための技術への応用が期待されます。


図3 試験に使用する治具[3]
図3 試験に使用する治具[3]

品質なCFRTP成形技術の実現に向けて

 このように、本研究室ではCFRTPのAFP成形について、成形による変形、成形中の熱履歴と材料状態、積層不良の修正という異なる観点から研究を進めています。

 研究では、CFRTPの成形試験や材料試験に加え、温度・ひずみの計測、X線回折、顕微鏡観察など、さまざまな実験・評価手法を用います。航空機用複合材料の製造という実用的な課題を対象としながら、材料力学、熱、材料組織などの知識を組み合わせて研究を行っています。


[1] Yuga Ono, Yuto Ishizuka, Hikaru Hoshi, Sho Kajihara, Yutaka Iwahori, "Effect of Interlayer Thermal History on the Post-Forming Crystalline State of AFP-Processed CFRTP", Mechcomp11, A052, 2026.

[2] ⼩野 雄河,岩堀 豊, PAEK樹脂の結晶状態と熱膨張特性の関係, 第51回複合材料シンポジウム, B102, 2026.

[3] Wyoming Test Fixtures, Inc., “ローラードラム剥離試験治具(ASTM D3167)”

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